My opinion

about motivation


私はモチベーションや円滑な治療を考える上で最も重要なのはラポールだと思います。

それはブラッシング指導や患者さんが必ずしも望んでいない治療をすすめなければいけない場合特に必要性を感じます。
なぜならラポールが芽生えてないと患者さんにモチベーションを行っても、それは単なる情報の提供に過ぎないからです。

しかしながら通常ブラッシング指導は、 初期の段階に行う事がほとんどで十分に時間をとれない環境において、 万全の体制でモチベーションに望む事の方が、限られているように思われます。

もしその限られた環境で出来るだけ患者さんとのラポールを築き上げたいと考えた時、 真っ先に考えられる事は、私たちがその患者さんにとって一番の理解者である事を知ってもらう事だと思います。 そのためにはもちろん患者さんの真の要求を知る必要があります。 (でも自覚のない方や間違った認識を持った方、 健康にたいする認識や学習が不足している方には情報の提供から必要なケースもあると思います。)


歯科衛生士さんの中には聞き上手な方もいっらっしゃるので、上手く患者さんの中で形にすらなっていない欲求でさえ、 うまく言葉で表現させるよう誘導が行える方もいらっしゃいます。

ところが私には十分な時間が取れたとしても、その人の真の要求を引き出せる自信はありません。

そのため私は初診時に、十分なカウンセリングの時間が取れない時は、 本当の意味でのモチベーションはいつ行ってもいいと割り切って考えるようになりました。
たとえそれがブラッシングがおろそかな口腔内だとしても来院されているうちは、 その患者さんには少なくても口腔内を健康に保とうとする意識があり、 いくらでもチャンスがあるので失敗にはならないと考えています。

(もし仮に途中で来院しなくなったとしてもいずれはその方の生活にプラスになると信じてます。 やっても無駄という事はあり得ないというのが私の信条なので・・・。)

実際忙しい患者さんの中では露骨に時間を気になさる方もいらっしゃいますが、 簡単に現状を説明するだけでも布石となり将来他の媒体や、 ちょっとした自覚症状などからその方の自分の健康を欲するきっかけになってくれれば、 時期が遅くなったとしてもその経験がかえって強固なモチベーションをうむことがあると思います。

最初は興味本位で受けていたブラッシング指導もいつかはその患者さんの 深層にある健康を欲する気持ちを引き出し口腔内の健康増進ために磨くようになる・・・ そういった”弱いモチベーション”の積み重ねも存在するのではないのでしょうか?

また私たちがその人の心理や行動を改革しようなんておこがましいですが、 それぐらいの気持ちを持って接する事も必要な時があるのかもしれません。


もちろんモチベーションという意味には私自身に対する働きかけもあります。

実際ブラッシング指導を行っていて 「歯磨きは毎日の積み重ねが大切なので私たちはあなたのお手伝いしかできません。 更にあなたが本当に直したいと思っていらっしゃらないとそれすら難しい事なんです。」 と患者さんに説明をしていても、実際ブラッシング指導が進むにつれ私自身の中に 「この患者さんの口腔内の状態を良くしたい。」という欲求がどんどん強くなっていき、 援助する立場から協力者に・・・ さらに共同作業者に向上して自然と患者さんに深く踏み込んでいたりします。


デンタルハイジーンの1996年l月号に掲載された 「モチベーション再考」 という投稿文中にモチベーションとはあくまでも患者自身が自分の健康増進の目的で自分自身によって働きかけるものと書かれていました。 (著作権があるので引用できませんでしたが、とても興味深い内容でした。) 私がいままで行っていたモチベーションをその言葉をお借りして敢えて言うならば、それは自分に対する働きかけなのかもしれません。

患者さんからの感謝の気持ちを聞くのも励みになり嬉しいものですが、 共同作業者となって患者さんと一緒になって目標を達成させようと努力する課程は、 更なる喜びにつながるものだと私は思います。

最後になりましたがブラッシング指導に熱心な先生に対しては、常に尊敬の念を抱いていきたいと思います。

1996.12.December

TOMOKO